特集B細胞リンパ腫をめぐる最新トピックスCAR-T療法や新規治療薬による治療成績向上への期待(3)B細胞リンパ腫は、患者数においてリンパ腫全体の3分の2以上を占め、血液内科医が診療する機会が多い疾患群であろう。ここでは、新規治療薬を中心としたトピックスに焦点を当て、それぞれの専門家に解説していただいた。まず、DLBCLのサブタイプの一つで予後不良とされるダブルヒットリンパ腫の分子病態とその治療の可能性、そして濾胞性リンパ腫に対する新規抗CD20抗体薬のオビヌツズマブの位置づけについての解説。次に、新しいWHO分類で遺伝子変異が診断に取り入れられ、わが国では適応外ながらブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬により治療体系が変わりつつある原発性マクログロブリン血症についての解説。最後に、最近、わが国で承認された新規治療薬から、再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対するCD19標的CAR-T療法である。いずれも血液内科医として知っておくべき重要なトピックスであろう。(責任編集 伊豆津宏二)
原発性マクログロブリン血症の診断と治療
イブルチニブなどのBTK阻害薬に期待
棟方理(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)
2019.08.08
原発性マクログロブリン血症(WM)は、骨髄でリンパ形質細胞が腫瘍性に増殖し、腫瘍細胞から産生される単クローン性高IgM血症を特徴とする低悪性度B細胞リンパ腫である。同疾患に対してはリツキシマブを中心とした様々な多剤併用療法が確立しているが、前向き比較試験に基づくデータは限られており、有効性の点では大きな差はないと認識されている。近年、MYD88遺伝子変異がWMに高頻度に認められることが報告され、MYD88遺伝子変異を有するWMに対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬の高い有効性が確認されている。ここでは、希少疾患であるWMの診断と今後の治療を展望する。