特集T/NK細胞リンパ腫の病態と治療開発の最前線新たな治療標的の発見と新規薬剤への期待(4)近年、T/NK細胞リンパ腫は、ゲノム、遺伝子発現、蛋白発現を含むオミクス解析技術の進歩等と共に、疾患ごとの病態解明は大きく前進した。また、最近では再発難治例を中心に相次いで新薬が承認され、治療選択肢が多様となった。ここでは、T/NK細胞リンパ腫の中で頻度の高い疾患(ここでは末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)と総称する)と成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)に焦点を絞り、化学療法から移植、さらには新薬開発まで幅広く解説いただいた。実臨床では、自分自身を含めて、目の前の患者さんに、さてどう治療するのが最もよいのか、と迷う場面も多いように思う。T/NK細胞リンパ腫の領域では、たとえ専門家であっても絶対的な正解を示すのが難しい状況の中で、本特集が現場で奮闘しておられる先生方のご判断の一助になり、またエールをお送りすることができれば、何よりである。(責任編集 坂田(柳元)麻実子)
成人T細胞白血病/リンパ腫の治療戦略
同種移植、新規薬剤、免疫療法の課題と展望
中野伸亮(今村総合病院 血液内科)
2020.01.16
成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)は、様々な多剤併用化学療法や同種造血幹細胞移植が行なわれてきたが、その予後は他の造血器腫瘍と比較して、依然として不良である。近年、モガムリズマブやレナリドミドなどの新規薬剤が臨床に用いられるようになり、これらの薬剤を同種移植前後にどのように使用するかについての検討が進んでいる。また、分子病態の解明も進みつつあり、それに基づいた分子標的療法や免疫療法の開発も進められている。ここではATLの治療戦略の現状を踏まえ、今後を展望する。