2018年6月の注目論文(Vol. 1)
坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 准教授)
2018.06.07
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2018年6月分(Vol. 1)は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。
Lancet Oncol. 19(5):649-659
Italiano A, Soria JC, Toulmonde M, Michot JM, Lucchesi C, Varga A, Coindre JM, Blakemore SJ, Clawson A, Suttle B, McDonald AA, Woodruff M, Ribich S, Hedrick E, Keilhack H, Thomson B, Owa T, Copeland RA, Ho PTC, Ribrag V
ここに注目!
再発難治性のB細胞リンパ腫および進行期固形がんの患者を対象としたTazemetostat(経口EZH2阻害剤)の phaseⅠ試験。100mg 1日2回から1600mg 1日2回へdose escalationが行われた。EZH2変異解析は後方視的に行われた。B細胞リンパ腫の組織型の内訳はdiffuse large B-cell lymphoma(DLBCL) 13/21例(62%)、follicular lymphoma(FL) 7/21例(33%)、marginal zone lymphoma(MZL) 1/21例(5%)、EZH2変異がみられたのはこのコホートでは2例のみ(いずれもDLBCL)であった。B細胞リンパ腫の約半数は前治療歴4ライン以上、また約半数は移植後再発であった。治療関連の主な有害事象は無力感、貧血、食欲不振、筋けいれんなど。B細胞リンパ腫の奏効は8/21例(38%)、完全寛解は3例に認められた。EZH2変異のある2例のうち1例は部分寛解を16カ月継続した。一方、固形がんでの奏効は2/43例(5%)に認められたのみであった。Tazemetostatの安全性は許容範囲であり、一定以上の奏効がみられたと結論している。
再発難治DLBCL、FLを対象とする第Ⅱ相試験は本結果をもとにTazemetostat 800mg1日2回で行われ、ICML2017で良好な成績が発表されている。