2019年8月の注目論文(Vol. 2)
木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)
2019.08.22
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年8月分(Vol. 2)は、木崎昌弘氏が担当します。
Blood. 134(3):252-262
Ferreri AJM, Calimeri T, Conte GM, Cattaneo D, Fallanca F, Ponzoni M, Scarano E, Curnis F, Nonis A, Lopedote P, Citterio G, Politi LS, Foppoli M, Girlanda S, Sassone M, Perrone S, Cecchetti C, Ciceri F, Bordignon C, Corti A, Anzalone N
ここに注目!
中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、血液脳関門(BBB)が存在するために一般の薬剤の効果が乏しく、大量メトトレキサートを基盤とする化学療法や全脳照射が行なわれる。しかしながら、PCNSLの治療成績は他の節外性リンパ腫よりも悪く、生物学的にも特異性を示すために副作用の少ないより効果的な治療法が求められている。今回、Ferreriらのイタリアのグループは、動物実験によりTNFが血管透過性を高めることを明らかにし、血管内皮に発現するCD13を認識するペプチドを付加したNGR-hTNFとR-CHOP療法を併用することで、再発・難治PCNSLに優れた効果を示すことを報告した。R-CHOP療法に先立ちNGR-hTNFを投与することで血管透過性が亢進し、R-CHOP療法の効果が高められたと考えられ、12例中9例(CR:8例、PR:1例)に効果を認めた。治療効果の持続期間は全例6カ月以上であったが、12カ月までに病勢の進行が認められた。PCNSLには副作用の少ないより効果的な治療法の開発が求められており、preliminaryな結果であるが注目される論文である。