2019年2月の注目論文(Vol. 1)
柴山浩彦(大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学 准教授)
2019.02.07
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年2月分(Vol. 1)は、柴山浩彦氏が担当します。
Lancet Oncol. 19(12):1641-1653
Trudel S, Lendvai N, Popat R, Voorhees PM, Reeves B, Libby EN, Richardson PG, Anderson LD Jr, Sutherland HJ, Yong K, Hoos A, Gorczyca MM, Lahiri S, He Z, Austin DJ, Opalinska JB, Cohen AD
ここに注目!
近年、多発性骨髄腫(MM)に対しては多くの薬剤が登場し治療成績も飛躍的に向上しているが、治癒と思われる症例は稀で多くの症例が再発を繰り返すこととなり、まだまだ新しい薬剤が必要とされる。本論文では、抗BCMA抗体にMMAFという微小管合成阻害剤を結合した新規のADCの第Ⅰ・Ⅱ相試験の結果が報告されている。73例の再発・難治MM患者(49例が前治療レジメン数が5以上)に対し試験が行なわれた。第Ⅰ相では4.60mg/kgまで用量制限毒性は認められなかったが、有効性と安全性の面から第Ⅱ相の推奨用量は3.40mg/kg(3週に1回、1時間で点滴静注投与)に決定された。主なグレード3、4の副作用は血小板減少(第Ⅰ・Ⅱ相ともに34%)、貧血(第Ⅰ相16%、第Ⅱ相14%)であり、治療薬関連SAEは12例に認められたが治療薬関連死亡はなかった。また、第Ⅱ相では有効性は全奏効率が60%であった。新たなMM治療薬として大いに期待される。