2019年1月の注目論文(Vol. 2)
坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 准教授)
2019.01.24
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年1月分(Vol. 2)は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。
Tisagenlecleucel in Adult Relapsed or Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma.
N Engl J Med. 379(26):2517-2528
Woyach JA, Ruppert AS, Heerema NA, Zhao W, Booth AM, Ding W, Bartlett NL, Brander DM, Barr PM, Rogers KA, Parikh SA, Coutre S, Hurria A, Brown JR, Lozanski G, Blachly JS, Ozer HG, Major-Elechi B, Fruth B, Nattam S, Larson RA, Erba H, Litzow M, Owen C, Kuzma C, Abramson JS, Little RF, Smith SE, Stone RM, Mandrekar SJ, Byrd JC
ここに注目!
再発難治性のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)に対するtisagenlecleucel(CD19に対するCAR-T細胞療法)を用いたphase Ⅱ 試験(JULIET)。自家移植不適応あるいは自家移植後再発が対象。主要評価項目は最良全奏効率。238例がスクリーニングされ、165例が登録、このなかで111例に実際にtisagenlecleucel投与された。このうち95例が主要解析コホートであり、データカットオフまで>3カ月経過した93例について解析された。92%の症例はCAR-T投与前にbridging化学療法を受けた。投与前にリンパ球除去のため化学療法(Fludarabine+Cyclophosphamide 73%、Bendamustine 20%)を1コース投与。登録から投与までの中央値は54日。投与からデータカットオフまでの中央期間は14カ月。最良全奏効率は52%(完全奏効40%、部分奏効12%)。奏効例について12カ月時点での無増悪生存は65%、完全奏効例では79%。Grade3-4有害事象はサイトカイン症候群22%、神経毒性12%、28日以上持続する血球減少32%、感染症20%、発熱性好中球減少症14%、3例は投与から30日以内に原病進行で死亡。奏効の有無と腫瘍細胞のCD19発現あるいは免疫関連蛋白の発現の程度に差はなかった。
再発難治性DLBCLに対してCD19-CAR-T細胞療法は有望な治療戦略である。効果予測のためのバイオマーカーの開発が望まれる。