2019年10月の注目論文(Vol. 2)
張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液・免疫病学分野 教授)
2019.10.17
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2019年10月の注目論文(Vol. 2)は、張替秀郎氏が担当します。
Roxadustat for Anemia in Patients with Kidney Disease Not Receiving Dialysis.
N Engl J Med. 381(11):1001-1010
Chen N, Hao C, Peng X, Lin H, Yin A, Hao L, Tao Y, Liang X, Liu Z, Xing C, Chen J, Luo L, Zuo L, Liao Y, Liu BC, Leong R, Wang C, Liu C, Neff T, Szczech L, Yu KP
ここに注目!
非透析腎臓病の貧血に対するRoxadustat治療
正常酸素分圧下ではProlyl hydroxylase(PHD)が活性化し、転写因子HIF2αはユビキチン化され分解されるため、エリスロポエチンをはじめとするターゲット遺伝子の転写は抑制されている。Roxadustat(FG-4592)は経口のPHD阻害剤で、HIF2αを安定化させる作用を有する。本研究は、エリスロポエチン産生が相対的に低下している腎性貧血(非透析)における本剤の有効性・安全性を検証するプラセボ対照ランダム化試験である。プラセボと比較し、本剤投与群では有意に貧血が改善するとともに、へプシジンレベルが低下し、鉄代謝も改善した。HIF2αの発現上昇は多岐にわたる組織の変化をもたらす可能性があり、長期的な安全性の確認が必要であるが、本研究において本剤が腎性貧血に対する新たな治療薬であることが示された。なお、本号の別の論文では透析患者を対象としたRCTの結果が報告されているが、本邦においては世界に先駆けて本剤の透析患者への投与が保険承認されている。