2020年2月の注目論文(Vol. 2)
張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液・免疫病学分野 教授)
2020.02.20
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2020年2月の注目論文(Vol. 2)は、張替秀郎氏が担当します。
Enhanced CAR-T cell activity against solid tumors by vaccine boosting through the chimeric receptor.
Science. 365(6449):162-168
Ma L, Dichwalkar T, Chang JYH, Cossette B, Garafola D, Zhang AQ, Fichter M, Wang C, Liang S, Silva M, Kumari S, Mehta NK, Abraham W, Thai N, Li N, Wittrup KD, Irvine DJ
ここに注目!
vaccine-boostingによる固形腫瘍に対するCAR-T療法の効果増強
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法は、造血器腫瘍に対する有効性が示されているが、固形腫瘍に対する効果は現時点では限定的である。本研究では、固形腫瘍に対するCAR-T効果の増強が、キメラ抗原受容体(CAR)を介したvaccine-boostingにより得られることを報告している。具体的には、両親媒性CAR-T ligand (amph-ligand)を用いたboostingはCAR-Tの顕著な増殖と機能の多様性をもたらし、正常な免疫能を持つマウスにおける腫瘍モデルで良好な抗腫瘍効果を発揮したことを示している。さらに、amph-ligandと腫瘍抗原を認識するbispecific CARを導入することで、複数の腫瘍モデルにおいてboostingによる効果が得られることを明らかにした。
本研究で示されたアプローチは、抗原やHLA非依存性に安全にCAR-T効果を増幅できる方法と考えられ、固形腫瘍に対するCAR-T療法の応用が進む可能性がある。