2021年7月の注目論文(Vol. 1)
木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)
2021.07.01
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2021年7月分(Vol. 1)は、木崎昌弘氏が担当します。
Efficacy of the BNT162b2 mRNA COVID-19 Vaccine in Patients with Chronic Lymphocytic Leukemia
Blood. 2021 Apr 16:blood.2021011568. doi: 10.1182/blood.2021011568. Online ahead of print.
Herishanu Y, Avivi I, Aharon A, Shefer G, Levi S, Bronstein Y, Morales Moshiashvili M, Ziv-Baran T, Shorer Y, Scarfo L, Joffe E, Perry C, Ghia P.
ここに注目!
COVID-19感染症に対しては、ここにきて我が国においても高齢者を中心に、急速にワクチン接種が進んでおり、われわれも外来にてワクチン接種について訊かれることが多い。しかしながら、血液疾患患者にワクチン接種した際の効果については、はっきりしたエビデンスがないことも事実である。本論文は、世界で最もワクチン接種の進んでいるイスラエルからの臨床研究であり、ファイザー社製のmRNAワクチンをCLL患者に接種した際の有効性を、2回接種後の抗体獲得率について年齢や性を合わせた健常コントロールと比較検討したものである。その結果、やはりCLL患者での有効性は低く、健常人ではほぼ100%有効であるのに対して、治療後寛解、無治療、治療中での有効性は各々79.2%、55.2%、16%であった。特に、最近では治療の第一選択となっているイブルチニブ投与患者の有効性が16%、ベネトクラクス+/-リツキシマブ投与患者では13.6%であった。治療中の患者に対するワクチン接種は悩ましいところであるが、参考になる論文である。