2021年3月の注目論文(Vol. 2)
木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)
2021.03.18
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2021年3月分(Vol. 2)は、木崎昌弘氏が担当します。
Idecabtagene Vicleucel in Relapsed and Refractory Multiple Myeloma
N Engl J Med. 384(8):705-716
Munshi NC, Anderson LD Jr, Shah N, Madduri D, Berdeja J, Lonial S, Raje N, Lin Y, Siegel D, Oriol A, Moreau P, Yakoub-Agha I, Delforge M, Cavo M, Einsele H, Goldschmidt H, Weisel K, Rambaldi A, Reece D, Petrocca F, Massaro M, Connarn JN, Kaiser S, Patel P, Huang L, Campbell TB, Hege K, San-Miguel J
ここに注目!
本論文は、BCMA CAR-T細胞療法に関する第II相試験の結果である。多発性骨髄腫治療の問題点は、プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬さらには抗CD38抗体を既に使用しても、再発を繰り返す症例への対応である。このようなheavily treatedな症例に対するアプローチで期待されるのが、CAR-T細胞療法などの免疫療法である。Idecabtagene vicleucel(ide-cel, bb2121)は、11D5-3 scFv、4-1BB共刺激ドメインを有し、レンチウイルスで導入されたCAR-T細胞で、既に第I相試験の結果は報告されている。本論文で示された第II相試験での128例の対象症例は、中央値6ラインの治療歴があり、89%が2剤耐性、84%が3剤耐性であり、35%は高リスク染色体を有し、39%に髄外腫瘤形成がみられた。このような厳しい症例に対し、150×106から450×106の細胞が投与され、主要評価項目のORRは73%、CR33%、PFS中央値8.8カ月、OS中央値19.4カ月であった。血球減少がほとんどの症例で認められたが、気になるGrade 3以上のCRSは5%、神経毒性は3%であった。単回投与であるがCAR-T細胞は6カ月で59%、12カ月で36%残存し、BCMA発現は効果とともに減少し、その後リバウンドするとのことである。この結果を見る限り、BCMAを標的とするCAR-T細胞療法は、種々の治療薬に耐性となった症例に対する新たな治療として期待される。