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この論文に注目!Focus On

2022年8月の注目論文(Vol. 2)

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2022年8月分(Vol. 2)は、宮﨑泰司氏が担当します。

Clonal dynamics of haematopoiesis across the human lifespan

Nature. 2022 Jun;606(7913):343-350. doi: 10.1038/s41586-022-04786-y. Epub 2022 Jun 1.

Mitchell E, et al.

ここに注目!

ヒトの造血は年齢と共に変化し、造血器腫瘍発症などと関連しているが、70代頃より造血機能の低下がみられる機序は十分に分かっていない。この研究では年代の異なる10名から得られた造血細胞よりコロニー培養を行ない、3,579個のコロニーについてゲノム配列を解析した。その結果、造血幹細胞/多能性前駆細胞は生後平均して年に17個のゲノム変異を獲得し、テロメア長は約30塩基短縮していた。65歳未満の造血は多クローン性で、多様性も大きく、およそ20,000から200,000個の造血幹細胞/多能性前駆細胞が造血に寄与していた。一方で75歳を超えるとクローン多様性は減少し、高齢者では造血の30-60%は、それぞれが1-34%をカバーする12-18の独立したクローンで賄われていた。ほとんどのクローンは40歳未満より拡大が始まっていたが、既知のドライバー変異は22%にしか確認されなかった。急激なクローン多様性の減少は高齢者に共通の事象だが、未同定の多くの遺伝子変化によると考えられた。ヒトを対象とした長年の造血を解析した結果で、今後の関連研究にも影響を与えると思われる。