2022年6月の注目論文(Vol. 1)
木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)
2022.06.09
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2022年6月分(Vol. 1)は、木崎昌弘氏が担当します。
Nat Med. 28(3):557-567.
Gomez IG, et al.
木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 教授)
2022.06.09
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2022年6月分(Vol. 1)は、木崎昌弘氏が担当します。
Nat Med. 28(3):557-567.
Gomez IG, et al.
ここに注目!
MDアンダーソンのグループは、123例の多数のMDS患者検体を用い、造血幹細胞(HSC)と前駆細胞の統合的な分子プロファイリングを行なった。その結果、MDSではBCL-2による生存シグナルに依存するCMP(common myeloid progenitors)グループとNF-κBシグナルに依存するGMP(granulocytic-monocytic progenitors)グループの2つの分化状態にあるHSCが存在することが明らかになった。各々のシグナル伝達経路を阻害薬にてブロックすることで、MDS HSCが減少し腫瘍量が減少した。また、高リスクMDSに対する標準治療であるメチル化阻害薬(HMA)アザシチジンに奏効しなかった症例について検討したところ、CMPパターンのHSCを有する症例では、BCL-2発現が上昇しており、BCL-2阻害薬ベネトクラクスが奏効したが、GMPパターンのHSCを有する症例では効果を認めなかった。以上の結果より、MDSでのHSC構造は、HMA治療失敗後の二次治療の指針となる予測マーカー候補であることが明らかになった。患者検体からのシングルセルの解析とマウスモデルを組み合わせた説得力ある内容で、MDS HSCの階層性を明らかにするとともに臨床的に重要な情報を提供する卓越した論文であると考える。