2022年3月の注目論文(Vol. 2)
坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 教授)
2022.03.31
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2022年3月分(Vol. 2)は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。
Nature Cell Biology, in press.
Yoshiaki Abe, Mamiko Sakata-Yanagimoto, Manabu Fujisawa, Hiroaki Miyoshi, Yasuhito Suehara, Keiichiro Hattori, Manabu Kusakabe, Tatsuhiro Sakamoto, Hidekazu Nishikii, Tran B Nguyen, Yohei Owada, Tsuyoshi Enomoto, Aya Sawa, Hiroko Bando, Chikashi Yoshida, Rikako Tabata, Toshiki Terao, Masahiro Nakayama, Koichi Ohshima, Kensuke Usuki, Tatsuya Oda, Kosei Matsue, Shigeru Chiba
ここに注目!
悪性リンパ腫は、しばしばリンパ節病変を主体として発生する。リンパ節の内部は特殊な役割を担う各領域に分かれ、間質細胞(血管・リンパ管・内皮細胞ではない間質細胞)はリンパ球などの免疫細胞が各領域間の往来や活性化するのに関わると考えられてきた。筆者らは「正常」リンパ節および悪性リンパ腫のリンパ節病変から間質細胞成分を抽出し、シングルセルRNAシーケンス解析(scRNA-seq)、およびscRNA-seqで同定された各分画の局在を免疫組織学的染色などで同定することで、間質細胞の全容について単一細胞アトラスを作製した。血管・リンパ管・間質細胞について、10種類、8種類、12種類、合計30種類のサブタイプに分類されることが明らかとなった。これらのサブタイプの一部は、これまでの解析ではヒトのリンパ節では同定されていなかった。間質細胞アトラスを用いることで、濾胞性リンパ腫に特徴的な間質細胞プロファイルが明らかとなった。さらにリンパ腫細胞と仮想的なネットワーク解析を行なうことにより、リンパ腫細胞と間質細胞の各サブタイプ間の相互作用分子を同定するとともに、公開データを用いて予後指標となり得る間質細胞の因子を抽出した。単一細胞アトラスは、悪性リンパ腫のみならず、がん免疫研究のプラットフォームとしても応用が期待される。