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この論文に注目!Focus On

2022年5月の注目論文(Vol. 2)

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2022年5月分(Vol. 2)は、宮﨑泰司氏が担当します。

Ivosidenib and Azacitidine in IDH1-Mutated Acute Myeloid Leukemia

N Engl J Med. 2022 Apr 21;386(16):1519-1531.

Montesinos P, Recher C, Vives S, Zarzycka E, Wang J, Bertani G, Heuser M, Calado RT, Schuh AC, Yeh SP, Daigle SR, Hui J, Pandya SS, Gianolio DA, de Botton S, Döhner H.

ここに注目!

正常のIDH1蛋白質はイソクエン酸からα-ケトグルタル酸を産生するが、IDH1変異は急性骨髄性白血病(AML)の6-10%で認められ、変異蛋白質はジヒドロキシグルタル酸を産生して、白血病の成立に深く関与すると考えられている。この試験では、IDH1変異陽性AMLで強力化学療法の適応がない症例を、アザシチジン(AZA)と変異IDH1阻害薬(ivosidenib:IVO)の併用療法群と、AZA+プラセボ群(コントロール群)に無作為に割り付け、IVOの効果を検証した。主要評価項目は無イベント生存で、観察期間中央値12.4カ月で、ハザード比は0.33(95%信頼区間0.16-0.69、P=0.002)とAZA+IVO群が有意に優れていた。副次評価項目の全生存においても中央値でAZA+IVO群24カ月、コントロール群7.9カ月、ハザード比は0.44(95%信頼区間0.27-0.73、P=0.001)と有意差が見られた。有害事象は血球減少と感染症が主なもので両群間に特に差は見られなかった。AZA+IVOの有用性は明らかとなったが、IDH1変異陽性AMLに対してはAZA+ベネトクラクス併用療法も高い効果が示されており、両治療法をどのように用いるか重要な課題となる。