2023年2月の注目論文(Vol. 1)
伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)
2023.02.02
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年2月分(Vol. 1)は、伊豆津宏二氏が担当します。
Zanubrutinib or Ibrutinib in Relapsed or Refractory Chronic Lymphocytic Leukemia
N Engl J Med. 2022 Dec 13. doi: 10.1056/NEJMoa2211582. Online ahead of print.
Brown JR, Eichhorst B, Hillmen P, Jurczak W, Kaźmierczak M, Lamanna N, O'Brien SM, Tam CS, Qiu L, Zhou K, Simkovic M, Mayer J, Gillespie-Twardy A, Ferrajoli A, Ganly PS, Weinkove R, Grosicki S, Mital A, Robak T, Osterborg A, Yimer HA, Salmi T, Wang MD, Fu L, Li J, Wu K, Cohen A, Shadman M.
ここに注目!
再発・難治性慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)を対象として、first-in-classのBTK阻害薬であるイブルチニブ(Ibr)と、BTKに対する選択性の高い第2世代BTK阻害薬ザヌブルチニブ(Zan)の効果を比較した第Ⅲ相試験(ALPINE試験)の報告で、2022年の米国血液学会のLate-Breaking Abstracts Sessionでの発表と同時に論文が公表された。予め規定された中間解析でプライマリエンドポイントの奏効割合がIbr群よりZan群の方が優れていることが分かっていたが1)、今回のデータカットオフで無増悪生存期間(PFS)についてもZan群が優れていることが分かった。両群のPFSの差はTP53異常のある患者で特に顕著であった。有害事象のプロファイルは両者で同様であったが、治療中止に至る心イベント(心房細動を含む)はZan群が少なかった。Zanは日本では未承認だが、米国ではこの試験結果を根拠として、NCCNガイドラインでCLL/SLLに対する一次治療・二次治療以降のpreferred regimensの1つとして位置づけられている。
1) Hillmen P, et al. J Clin Oncol. 2022 Nov 17[Online ahead of print]