2023年1月の注目論文(Vol. 2)
坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 教授)
2023.01.19
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年1月分(Vol. 2)は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。
Cancer Discov. 2022 Dec 2;12(12):2763-2773. doi: 10.1158/2159-8290.CD-22-0086.
SanMiguel JM, Eudy E, Loberg MA, Young KA, Mistry JJ, Mujica KD, Schwartz LS, Stearns TM, Challen GA, Trowbridge JJ.
ここに注目!
クローン性造血のうちR882型DNMT3A変異のあるタイプがクローン拡大するメカニズムについて、マウスモデルを用いて明らかにした論文である。加齢に伴うTNFαシグナルの活性化によって、R882型DNMT3A変異造血幹細胞(HSC)は野生型に比して選択的優位性を獲得し、Bリンパ球の産生が促進され、ミエロイド系細胞の産生は抑制された。また、TNFα受容体であるTNFR1、TNFR2のうち、TNFR1欠損によりHSCの選択的優位性は消失する一方、TNFR2欠損によりミエロイド系細胞の産生が促進された。これらの結果から、R882型DNMT3A変異というイベントの下で、クローン拡大と特定の成熟血球の産生は別々に制御されていること、さらにはTNFR1を標的とすることでクローン性造血によるクローン拡大を抑制できる可能性が示唆された。