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この論文に注目!Focus On

2023年7月の注目論文(Vol. 1)

宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年7月分(Vol. 1)は、宮﨑泰司氏が担当します。

Familial Clonal Hematopoiesis in a Long Telomere Syndrome

N Engl J Med. 2023 Jun 29;388(26):2422-2433. doi: 10.1056/NEJMoa2300503. Epub 2023 May 4.

DeBoy EA, Tassia MG, Schratz KE, Yan SM, Cosner ZL, McNally EJ, Gable DL, Xiang Z, Lombard DB, Antonarakis ES, Gocke CD, McCoy RC, Armanios M.

ここに注目!

ここ数年、血液異常を示さないクローン性造血に注目が集まっている。これは「病的意義が定まっていないクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential, CHIP)」と呼ばれ、造血器を超えて多臓器疾患の病態と関連を持つことが示されている。この論文ではテロメア調節異常に伴うクローン性造血と全身の腫瘍性疾患との関連について検討された。細胞分裂に伴うテロメア短縮は細胞老化の一つの特徴であり、加齢に伴って増加する疾患との関連が知られている。一方で、テロメア長が維持されるとどういったことが生ずるのかについては十分に検討されていない。本論文ではテロメア関連遺伝子の一つであるPOT1の機能喪失型変異を持つ家系を詳細に検討した。その結果、POT1遺伝子変異によって家族性にテロメアが長いまま維持され、こうした異常を持つ家系では、T細胞にクローン性の増殖がみられる(5/18例、28%)とともに、家族性にCHIPを持つ割合が高くなり(8/12例、67%)、上皮、間葉系細胞、神経系およびB/T細胞性の良性から悪性の幅広いタイプの腫瘍が観察された。様々な検討より、これらの特徴はPOT1変異によってテロメアが長い状態で維持され、細胞が長期間生存できることと関連していると考えられた。