2023年7月の注目論文(Vol. 2)
木崎昌弘(埼玉医科大学総合医療センター 血液内科 客員教授)
2023.07.27
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年7月分(Vol. 2)は、木崎昌弘氏が担当します。
Blood. 2023 Apr 5:blood.2022016896. doi: 10.1182/blood.2022016896. Online ahead of print.
Dolinska M, Cai H, Mansson A, Shen J, Xiao P, Bouderlique T, Li X, Leonard E, Chang M, Gao Y, Medina Giménez JP, Kondo M, Sandhow L, Johansson AS, Deneberg S, Söderlund S, Jädersten M, Ungerstedt JS, Tobiasson M, Östman A, Mustjoki S, Stenke L, Le Blanc K, Hellstrom-Lindberg ES, Lehmann S, Ekblom M, Olsson-Strömberg U, Sigvardsson M, Qian H.
ここに注目!
チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が導入されてから慢性骨髄性白血病(CML)の治療成績は格段に向上したが、治癒を目指すためにはCML幹細胞(LSC)を直接の標的とした新たな治療戦略が必要である。Karolinskaからの本論文は、CML患者と健常人の骨髄ストローマ細胞を比較し、CML患者の骨髄ニッチには幹細胞の維持に重要なケモカインCXCL14が欠損していることを見出し、CXCL14がCML治療の新たな標的になり得ることを示したものである。マウスの系を用いて、CXCL14を過剰発現した骨髄ストローマ細胞を移植するとCML LSCは抑制された。さらに、イマチニブはリコンビナントCXCL14と協調的にCML LSCの増殖を抑制した。RNA-seqを用いて、CXCL14によるCML LSCの増殖抑制機構を検討したところ、mTORシグナルの抑制、OXPHOSの発現低下に伴う酸化経路の異常によるミトコンドリア機能低下などが考えられた。以上の結果より、CXCL14はLSCを標的とするCMLに対する新たな治療選択になることが考えられたとする興味深い論文である。CML診療における重要な情報かと思われる。