2023年6月の注目論文(Vol. 1)
柴山浩彦(国立病院機構 大阪医療センター 血液内科 科長)
2023.06.08
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年6月分(Vol. 1)は、柴山浩彦氏が担当します。
J Clin Oncol. 2023 Mar 7:JCO2201824. doi: 10.1200/JCO.22.01824. Online ahead of print.
Xia J, Li H, Yan Z, Zhou D, Wang Y, Qi Y, Cao J, Li D, Cheng H, Sang W, Zhu F, Sun H, Chen W, Qi K, Yan D, Qiu T, Qiao J, Yao R, Liu Y, Wang X, Zhang Y, Peng S, Huang CH, Zheng J, Li Z, Chang AH, Xu K.
ここに注目!
G protein-coupled receptor, class C group 5 member D(GPRC5D)を標的とした二重特異性抗体薬Talquetamabの第Ⅰ相試験の結果については、前回のこのコーナーで紹介した。今回は、GPRC5Dに対するCAR-T細胞療法の第Ⅱ相試験の結果を紹介する。前治療のライン数(中央値)が4ラインの33例の患者(年齢 39-70歳)に、本治療が実施された。全奏効率は91%(うちVGPR以上は76%)と良好であった。特筆すべきは、BCMA-CAR-T細胞療法を受けたことのある9例の患者全員にPR以上の奏効が得られたこと、うち2例は2回以上のBCMA-CAR-T細胞療法を受け、最終のBCMA-CAR-Tに抵抗性を認めた患者であった。サイトカイン放出症候群(CRS)は76%でみられたが、すべてGrade 1か2であり、また、神経症状は3例(Grade 2が1例、Grade 3が2例)で認めた。GPRC5Dは、再発・難治性多発性骨髄腫(RRMM)の免疫療法の標的として非常に有望な抗原である。