2023年3月の注目論文(Vol. 1)
横山寿行(東北大学大学院 医学系研究科 血液内科学分野 准教授)
張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液内科学分野 教授)
2023.03.09
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年3月分(Vol. 1)は、横山寿行氏と張替秀郎氏が担当します。
Blood. 2022 Jul 13:blood.2021014241. doi: 10.1182/blood.2021014241. Online ahead of print.
Janssen M, Schmidt C, Bruch PM, Blank MF, Rohde C, Waclawiczek A, Heid D, Renders S, Göllner S, Vierbaum L, Besenbeck B, Herbst SA, Knoll M, Kolb C, Przybylla A, Weidenauer K, Ludwig AK, Fabre MA, Gu M, Schlenk RF, Stölzel F, Bornhäuser M, Röllig C, Platzbecker U, Baldus CD, Serve H, Sauer T, Raffel S, Pabst C, Vassiliou GS, Vick B, Jeremias I, Trumpp A, Krijgsveld J, Müller-Tidow C, Dietrich S.
ここに注目!
急性骨髄性白血病(AML)に対するベネトクラクス(Ven)レジメンは、高齢者を中心に急速に広まりつつある。しかし、その治療効果が永続する例は少なく、新たな併用薬剤の開発が求められている。筆者らはVenと相乗的な効果を示す薬剤のスクリーニング結果からギルテリチニブ(Gil)に着目した。GilはFLT3変異の有無にかかわらずVenに相乗的な効果を示し、Gil/Ven併用はVen/アザシチジン(Aza)抵抗AML細胞に対してアポトーシスの誘導が可能であった。その機序について検討を行なったところ、GilはFLT3とAXLを共に阻害することにより、ERK、GSK3Bのリン酸化を阻害し、MCL-1蛋白の減少をもたらすことが示された。Ven/Aza抵抗となった患者のAML細胞移植マウスにおいてもGil/Venの効果が認められた。この結果はFLT3変異の有無にかかわらず、Gil/Ven併用によってVen抵抗性を克服できる可能性を示すものである。Gilはすでに再発・難治FLT3変異AMLに対し広く使用されている薬剤であり、海外ではFLT3変異AMLに対しGil/Ven併用療法の臨床研究がすでに開始されている。Gilなど既存薬でVen/Aza療法の効果を高めることが可能であるとすればそのメリットは大きく、今後の進展が期待される。