2023年5月の注目論文(Vol. 1)
伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)
2023.05.11
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年5月分(Vol. 1)は、伊豆津宏二氏が担当します。
Blood. 2023 Mar 1:blood.2022018827. doi: 10.1182/blood.2022018827. Online ahead of print.
Spinner MA, Sica RA, Tamaresis JS, Lu Y, Chang C, Lowsky R, Frank MJ, Johnston LJ, Miklos DB, Muffly L, Negrin RS, Rezvani AR, Shiraz P, Shizuru JA, Weng WK, Binkley MS, Hoppe RT, Advani RH, Arai S.
ここに注目!
自家移植併用大量化学療法(ASCT)は、再発・難治性古典的ホジキンリンパ腫(HL)に対して治癒をもたらしうる治療である。本研究は、ブレンツキシマブ ベドチン(BV)や抗PD-1抗体などの新規治療薬により再発・難治性HLに対してASCTを受けた患者の予後がどのように変化したかをみたStanford大学での単施設後方視研究である。新規治療薬登場後の時代の方が、ASCT後の予後も、ASCT後再発を来した患者の再発後の予後も良好であった。興味深いことに、ASCT前に抗PD-1抗体による治療を受けていることがASCT後の予後良好因子であった。抗PD-1抗体を含む治療で奏効が得られた患者は、化学療法感受性が証明されたわけではないので、古典的な考え方ではASCTの適応かどうか議論のあるところだろう。しかし、最近、抗PD-1抗体療法後の再発・難治性HLに対するASCTの予後が良好という報告は他にもあり(Blood Adv. 2021; 5:1648)、抗PD-1抗体により化学療法感受性が高まるからだろうと考察されている。米国ではASCT適応の再発・難治性HLに対して、ASCT実施を前提として多剤併用化学療法へのペムブロリズマブの上乗せ効果を評価する第Ⅲ相試験が開始予定である(NCT05711628)。