2023年5月の注目論文(Vol. 2)
坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 教授)
2023.05.25
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2023年5月分(Vol. 2)は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。
Effect of Donor Sex on Recipient Mortality in Transfusion
N Engl J Med. 2023 Apr 13;388(15):1386-1395.
Michaël Chassé, Dean A Fergusson, Alan Tinmouth, Jason P Acker, Iris Perelman, Angie Tuttle, Shane W English, Steven Hawken, Alan J Forster, Nadine Shehata, Kednapa Thavorn, Kumanan Wilson, Nancy Cober, Heather Maddison, Melanie Tokessy
ここに注目!
輸血におけるレシピエントの死亡率に対するドナーの性別の影響
赤血球ドナーの性別と輸血レシピエントの死亡率との関連に関しては、相反する研究結果が報告されている。そこで、これを検証するため、多施設二重盲検試験が計画された。赤血球輸血を受ける患者は、男性ドナーまたは女性ドナーのいずれかから赤血球輸血を受けるように無作為に割り当てられ、以後、試験期間中は入院および外来での輸血についても、割り当てられた性別のドナーからの輸血を受けた。無作為化は、それまでの赤血球輸血におけるドナーの性別比率と同じく、男性ドナーと女性ドナーの比率が60:40となるように実施した。主要評価項目はレシピエントの生存率、男性群を対照群とした。合計8,719人の患者が輸血を受ける前に無作為化され、5,190人は男性ドナー群、3,529人は女性ドナー群に割り当てられた。登録患者の平均年齢は 66.8±16.4歳だった。初回輸血では、6,969人(79.9%)は入院患者であり、そのうち2,942人(42.2%)は外科処置のための入院であった。輸血前のヘモグロビン値は7.95±1.97 g/dLであり、女性ドナー群では平均5.4±10.5単位、男性ドナー群で5.1±8.9単位の赤血球輸血を受けた。本試験期間中、女性ドナー群で1,141人の患者、男性ドナー群で1,712人の患者が死亡した。死亡の調整ハザード比は0.98(95% CI、0.91~1.06)であった。この試験では、女性ドナーからの赤血球輸血と男性ドナーからの赤血球輸血で生存率に有意差はみられなかった。