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この論文に注目!Focus On

2024年7月の注目論文(Vol. 2)

木崎昌弘(埼玉医科大学 名誉教授/よみうりランド慶友病院 副院長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2024年4月分は、木崎昌弘氏が担当します。

A Novel Anti-CD38 Monoclonal Antibody for Treating Immune Thrombocytopenia

N Engl J Med. 2024 Jun 20;390(23):2178-2190.

Chen Y, Xu Y, Li H, Sun T, Cao X, Wang Y, Xue F, Liu W, Liu X, Dong H, Fu R, Dai X, Wang W, Ma Y, Song Z, Chi Y, Ju M, Gu W, Pei X, Yang R, Zhang L.

ここに注目!

新たな抗CD38モノクローナル抗体CM313のITPに対する有効性を検討した中国からの報告である。ITPに対する1次治療に反応しない症例にはTPO受容体作動薬、リツキシマブなどの治療が行なわれているが、これらに対しても難治な症例は日常診療でも難渋することが多い。最近では新規治療薬が種々開発されているが、本論文は、自己免疫疾患への応用が期待されるCD38抗体のITPへの治療応用の可能性を示した初めての論文である。対象患者の平均血小板数は12x103/μLで前治療数は平均4(範囲:3-7)、試験に登録された22例のうち21例(95%)が2回以上連続して血小板数50x103/μL以上に達し、累積奏効期間中央値は23週、閾値への最初の到達までの期間中央値は11週であった。CD38標的治療後には、CD56dimCD16陽性NK細胞の割合、末梢血単球におけるCD32b発現、受動的ITPモデルマウス脾臓マクロファージ数は全て減少していた。CM313は、血小板に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を阻害することで血小板数を増加させ、また形質細胞の除去により長期間の有効性維持や低い毒性に関与するものと考えられる。なお、CM313は多発性骨髄腫や全身性エリテマトーデスでの臨床応用が考えられているとのことである。