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この論文に注目!Focus On

2024年5月の注目論文(Vol. 2)

伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2024年5月分(Vol. 2)は、伊豆津宏二氏が担当します。

High-dose chemotherapy and autologous haematopoietic stem-cell transplantation in older, fit patients with primary diffuse large B-cell CNS lymphoma (MARTA): a single-arm, phase 2 trial

Lancet Haematol. 2024 Jan 29:S2352-3026(23)00371-X. doi: 10.1016/S2352-3026(23)00371-X. Online ahead of print.

Schorb E, Isbell LK, Kerkhoff A, Mathas S, Braulke F, Egerer G, Röth A, Schliffke S, Borchmann P, Brunnberg U, Kroschinsky F, Möhle R, Rank A, Wellnitz D, Kasenda B, Pospiech L, Wendler J, Scherer F, Deckert M, Henkes E, von Gottberg P, Gmehlin D, Backenstraß M, Jensch A, Burger-Martin E, Grishina O, Fricker H, Malenica N, Orbán A, Duyster J, Ihorst G, Finke J, Illerhaus G.

ここに注目!

65歳以上の原発性中枢神経系びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(PCNSL)の未治療例に対して、リツキシマブ、大量メトトレキサート(MTX)、大量シタラビンの併用による寛解導入療法に続いて、自家造血幹細胞移植併用でリツキシマブ、ブスルファン・チオテパからなる大量化学療法を行なう一連の治療の第Ⅱ相試験の結果報告である。PCNSLに対する治療では、MTX大量療法を含む寛解導入療法後の地固め療法として、チオテパを含む前処置による自家移植と全脳照射のどちらが優れているかという議論が続いている。高齢の患者では全脳照射による認知機能低下のリスクが高い一方、自家移植の安全性が問題になりやすいというジレンマがある。この試験では年齢中央値71歳の患者が登録され、解析対象の51人中36人(71%)で自家移植が行なわれ、12カ月無増悪生存割合(PFS)は58.8%でプライマリエンドポイントには未達という結果であった。高齢者の中でも頑強な患者が選択的に登録された可能性はあるが、この世代の患者においても自家移植を含む治療が可能であることが示された。同グループでは、65歳超のPCNSL患者を対象として、地固め療法としての自家移植とプロカルバジンによる維持療法とを比較する第Ⅲ相試験を実施している(DRKS00024085)。