2024年11月の注目論文
木崎昌弘(埼玉医科大学 名誉教授/よみうりランド慶友病院 副院長)
2024.11.14
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2024年11月分は、木崎昌弘氏が担当します。
Lancet Haematol. 2024 Sep;11(9):e646-e658. doi: 10.1016/S2352-3026(24)00203-5. Epub 2024 Jul 19.
Matteo Giovanni Della Porta, Guillermo Garcia-Manero, Valeria Santini, Amer M Zeidan, Rami S Komrokji, Jake Shortt, David Valcárcel, Anna Jonasova, Sophie Dimicoli-Salazar, Ing Soo Tiong, Chien-Chin Lin, Jiahui Li, Jennie Zhang, Richard Pilot, Sandra Kreitz, Veronika Pozharskaya, Karen L Keeperman, Shelonitda Rose, Thomas Prebet, Yinzhi Lai, Andrius Degulys, Stefania Paolini, Thomas Cluzeau, Pierre Fenaux, Uwe Platzbecker.
ここに注目!
赤血球造血刺激因子製剤(ESA)未治療の低リスク骨髄異形成症候群(MDS)(EPO<500U/Lで輸血依存、環状鉄芽球(RS)を問わない)を対象に、TGF-β阻害薬ルスパテルセプトと短時間作用型ESAエポエチンαの効果を比較する第III相試験(COMMANDS試験)に関する興味深い論文で、最終解析結果は2023年のASHで報告された。
本試験には363例がエントリーされ、ルスパテルセプト群とエポエチン群に1:1に割り付けられた。主要評価項目である24週時点での12週以上の輸血非依存かつHb平均値1.5g/dL以上の増加は、ルスパテルセプト群60%、エポエチン群35%(p<0.0001)と有意にルスパテルセプト群で高く維持期間も長かった。Grade 3/4の有害事象は、ルスパテルセプト群59%、エポエチン群49%に認められ、両群で多かった治療上緊急な重篤有害事象は肺炎、COVID-19感染であった。白血病化は両群間で同程度であり、期間中の死亡率にも差がなかった。
以上の結果より、ルスパテルセプトは輸血依存性の低リスクMDSのESA未治療患者に対する新たな標準治療になると論文では結んでいる。ルスパテルセプトはRS症例やSF3B1変異陽性例への効果が知られているが、NCCNガイドラインでは、低リスクMDSの中で、5q-症候群を除くSF3B1変異を伴う低芽球例(他の染色体異常を有する場合もRS症例であれば)に推奨されており、詳細なサブ解析による適切な適応例を明らかにすることが求められる。