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この論文に注目!Focus On

2025年2月の注目論文(Vol. 1)

伊豆津宏二(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科 科長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2025年2月分(Vol. 1)は、伊豆津宏二氏が担当します。

The genomic and clinical consequences of replacing procarbazine with dacarbazine in escalated BEACOPP for Hodgkin lymphoma: a retrospective, observational study

Lancet Oncol. 2024 Dec 11:S1470-2045(24)00598-9. doi: 10.1016/S1470-2045(24)00598-9. Online ahead of print.

Santarsieri A, Mitchell E, Pham MH, Sanghvi R, Jablonski J, Lee-Six H, Sturgess K, Brice P, Menne TF, Osborne W, Creasey T, Ardeshna KM, Baxter J, Behan S, Bhuller K, Booth S, Chavda ND, Collins GP, Culligan DJ, Cwynarski K, Davies A, Downing A, Dutton D, Furtado M, Gallop-Evans E, Hodson A, Hopkins D, Hsu H, Iyengar S, Jones SG, Karanth M, Linton KM, Lomas OC, Martinez-Calle N, Mathur A, McKay P, Nagumantry SK, Phillips EH, Phillips N, Rudge JF, Shah NK, Stafford G, Sternberg A, Trickey R, Uttenthal BJ, Wetherall N, Zhang XY, McMillan AK, Coleman N, Stratton MR, Laurenti E, Borchmann P, Borchmann S, Campbell PJ, Rahbari R, Follows GA.

ここに注目!

eBEACOPP療法は、ドイツをはじめとして欧州で進行期古典的ホジキンリンパ腫(HL)の患者に対して長年使われてきた。日本で行われた中間PET-CTの結果による層別化治療の臨床試験でも、中間PET-CT陽性の場合、ABVD療法から変更する強化治療としてeBEACOPPが使われた1)。しかし、eBEACOPPの構成薬剤であるプロカルバジンは男性・女性とも不妊を来すリスクが高く、骨髄抑制も強いことから、別のアルキル化薬のダカルバジンに置換したレジメン(eBEACOPDac)も使われてきた。この後方視研究では、これら2つの治療法を比較し、HL患者の末梢血由来の造血幹細胞でみられる遺伝子変異量がeBEACOPPで多いこと、臨床成績ではeBEACOPDacで毒性が軽い割には効果が低下しなかったことを示している。二次発癌などの晩期障害は、臨床試験の主解析で評価することは難しく、直接的ではないが、遺伝子変異量によりそれを予想する試みとして興味深い。ドイツでeBEACOPPベースでのブレンツキシマブ ベドチン(BV)併用療法(BrECADD)が開発され、eBEACOPP療法よりも優れていることが発表されているが、そこでもプロカルバジンの代わりにダカルバジンが用いられている。薬事承認や保険償還の状況によりBV併用療法が困難な場合には、eBEACOPDacも有用な治療選択肢になりそうだ。

1) Kusumoto S, et al. 2024; 115(10):3384-3393.