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この論文に注目!Focus On

2025年7月の注目論文(Vol. 1)

木崎昌弘(埼玉医科大学 名誉教授/よみうりランド慶友病院 副院長)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2025年7月分(Vol. 1)は、木崎昌弘氏が担当します。

Nat Med. 2025 May;31(5):1531-1538. doi: 10.1038/s41591-025-03572-3. Epub 2025 Mar 10.

Cancer Cell. 2025 Jan 13;43(1):49-68.e9. doi: 10.1016/j.ccell.2024.11.006. Epub 2024 Dec 5.

Raajit K Rampal, Sebastian Grosicki, Dominik Chraniuk, Elisabetta Abruzzese, Prithviraj Bose, Aaron T Gerds, Alessandro M Vannucchi, Francesca Palandri, Sung-Eun Lee, Vikas Gupta, Alessandro Lucchesi, Stephen T Oh, Andrew T Kuykendall, Andrea Patriarca, Alberto Álvarez-Larrán, Ruben Mesa, Jean-Jacques Kiladjian, Moshe Talpaz, Joseph M Scandura, David Lavie, Morgan Harris, Sarah-Katharina Kays, Qing Li, Rainer Boxhammer, Barbara Brown, Anna-Maria Jegg, Claire N Harrison, John Mascarenhas.

ここに注目!

骨髄線維症に対する標準治療はJAK阻害薬のルキソリチニブであるが、効果は限定的であり、中断例も多く生存期間の延長や白血病化の防止効果が乏しいことは日常診療の中でよく実感する。新規治療薬モメロチニブも導入が難しいことが多く、骨髄線維症に対してはさらなる治療法の開発が望まれる。
本論文は、未治療骨髄線維症に対するBET阻害薬pelabresib+ルキソリチニブとルキソリチニブ単剤を比較した第Ⅲ相試験(MANIFEST-2)の結果である。主要評価項目は、24週目におけるベースラインからの脾臓容積35%以上の減少であり、副次的評価項目は総症状スコア(TSS)の絶対変化と、24週目におけるベースラインからのTSS50%以上減少(TSS50反応)である。いずれも、pelabresib+ルキソリチニブ併用療法がルキソリチニブ単独療法よりも優れており、かつ忍容性も高かった。BET阻害薬を併用することで、標準的な治療であるルキソリチニブ単剤よりも実際的な臨床的有用性を示したことは評価される。しかしながら、本試験では、長期に及ぶ効果の持続性や生存率などには言及されておらず、今後の長期的な解析結果が待たれるところである。