2025年10月の注目論文(Vol. 2)
宮﨑泰司(長崎大学 原爆後障害医療研究所 所長)
2025.10.23
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2025年10月分(Vol. 2)は、宮﨑泰司氏が担当します。
Pemigatinib for Myeloid/Lymphoid Neoplasms with FGFR1 Rearrangement
NEJM Evid. 2025 Sep;4(9):EVIDoa2500017. doi: 10.1056/EVIDoa2500017. Epub 2025 Aug 26.
Srdan Verstovsek, Jean-Jacques Kiladjian, Alessandro M Vannucchi, Jay L Patel, Alessandro Rambaldi, William E Shomali, Stephen T Oh, Kensuke Usuki, Claire N Harrison, Ellen K Ritchie, Luke P Akard, Juan Carlos Hernández-Boluda, Françoise Huguet, Philomena Colucci, Huiling Zhen, Natalia Oliveira, Aidan Gilmartin, Cheryl Langford, Tracy I George, Andreas Reiter, Jason Gotlib
ここに注目!
FGFR1(fibroblast growth factor receptor 1)遺伝子再構成を伴う骨髄性/リンパ性腫瘍(Myeloid/lymphoid neoplasms with FGFR1 rearrangement, MLN-FGFR1)は、WHO分類第5版では好酸球増加とチロシンキナーゼ遺伝子の融合を伴う骨髄性/リンパ性腫瘍に含まれており、慢性の骨髄系細胞増殖、B細胞性/T細胞性腫瘍、あるいは混合性の造血器腫瘍を発症する。芽球が増加する急性転化に似た病態では化学療法抵抗性となり予後不良であるが、同種造血幹細胞移植が実施できると一定の予後が期待できる。この腫瘍では、染色体8p11に存在するFGFR1遺伝子が様々なパートナー遺伝子と融合遺伝子を形成することでチロシンキナーゼであるFGFR1が恒常的に活性化し、造血器腫瘍発症に至ると考えられている。本試験では、MLN-FGFR1に対するFGF受容体(1から3)の阻害薬であるペミガチニブ(Pem)の有効性を単群第Ⅱ相試験(FIGHT-203)にて評価している。
適格患者47名が、経口Pem13.5 mgの1日1回を2週間投与後1週間休薬、または継続投与群に割り付けられた。このうちの45人[慢性期:24人(53%)、急性転化期:18人(40%)、既治療患者3人(7%)]にFGFR1遺伝子再構成が確認されている。中央判定による完全奏効率は74%(31/42人)であり、慢性期患者の96%(23/24人)、急性転化期患者の44%(8/18人)に認められた。細胞遺伝学的完全奏効は全体の73%(33/45人)で、完全奏効持続期間の中央値は未達であった(95%CI:27.9カ月~未達)。最も頻度の高い有害事象は高リン血症(76%)で、グレード3以上の有害事象は口内炎(19%)であった。ペミガチニブの投与中止、投与中断、減量はそれぞれ5例(11%)、30例(64%)、28例(60%)であった。
この試験によってMLN-FGFR1に対するPemの高い有効性が示され、今後、標準治療になると思われる。本邦でも使用可能でありPem投与後に同種造血幹細胞移植が実施される例も増加すると期待され、稀少疾患ではあるが新たな治療戦略が確立されたと考えられる。