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この論文に注目!Focus On

2026年2月の注目論文(Vol. 1)

市川聡(東北医科薬科大学 内科学第三(血液・リウマチ科) 准教授)
張替秀郎(東北大学大学院 医学系研究科 血液内科学分野 教授)

血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2026年2月分(Vol. 1)は、市川聡氏と張替秀郎氏が担当します。

Efficacy and safety of azacitidine for VEXAS syndrome: a large-scale retrospective study from FRENVEX.

Blood. 2025 September 18; 146(12):1450-1461. doi: 10.1182/blood.2024028133

Jachiet V, Kosmider O, Beydon M, Hadjadj J, Zhao LP, Grobost V, Lacombe V, Le Guenno G, Nguyen Y, Arlet JB, Dion J, Heiblig M, Garnier A, Samson M, Aouba A, Thepot S, Dimicoli-Salazar S, Dutasta F, Faucher B, Lazaro E, Morel V, Neel A, Outh R, Bezanahary H, Rossignol J, Alary AS, Bidet A, Blateau P, Bouvier A, Boursier G, Decamp M, Lebecque B, Le Bris Y, Sujobert P, Marceau-Renaut A, Pastoret C, Rizzo D, Boiret-Dupre N, Boucher L, Dulucq S, Genevieve F, Jadeau C, Lemaire P, Vazquez R, Rieu JB, Fain O, Georgin-Lavialle S, Rigolot L, Larcher L, Hirsch P, Terrier B, Fenaux P, Mekinian A, Comont T

ここに注目!

VEXAS症候群に対するアザシチジン:炎症・血球減少・UBA1クローンを同時に制御する治療戦略

VEXAS症候群は、UBA1体細胞変異に起因する後天性自己炎症疾患であり、高度の炎症症状と汎血球減少、骨髄異形成症候群(MDS)の合併を特徴とし、ステロイド薬や生物学的製剤による治療が行われるが、その奏効は限定的である。筆者らはフランスFRENVEXレジストリから遺伝学的に確定したVEXAS症候群例88例を集積し、アザシチジン(AZA)療法の有効性と安全性を後方視的に検討した。約8割がWHO 2022基準に合致するMDSを伴っていたが、MDS非合併例も含まれた。

活動性の炎症があった82例では、6カ月時点の炎症改善率は41%、12カ月で54%、最終的に61%に達した。AZA継続下の再燃は少なく、炎症改善後の非再燃生存率は1年で90%、5年で85%と良好であった一方、奏効中にAZAを中止した12例中9例が中央値3.1年で再燃しており、継続治療の必要性が示唆された。血液学的にも、貧血・血小板減少・好中球減少のいずれかを有した74例中69%で改善が得られ、輸血依存46例中65%が輸血依存から離脱できた。さらに、40例の分子解析では65%でUBA1 VAFが25%以上低下、43%で2%未満まで低下しており、分子学的反応は炎症および血液学的反応と強い関連性が見られた。安全性の面では、Grade 3/4の有害事象が60%にみられ、主に血球減少(36%)と感染症(34%)であった。多くは治療初期3コース以内に発生し、高齢および過去の多ラインの免疫抑制治療が早期感染の独立したリスク因子であった。

本研究は、AZAがMDS合併の有無を問わずVEXAS症候群において炎症制御、血球改善、UBA1クローン減少をもたらし、顕著な血球減少を伴う症例には一次治療の有力な選択肢、炎症制御不良例では第二選択薬として位置づけうることを示した。VEXAS症候群診療におけるDNAメチル化阻害薬の役割を明確化した、実臨床に直結する重要な報告と考えられる。