2026年10月の注目論文(Vol. 1)
坂田(柳元)麻実子(筑波大学 医学医療系 血液内科 教授)
2026.10.08
血液専門医である「Hematopaseo」のアドバイザリーボードメンバーが、血液領域の最新論文から注目すべきものをピックアップ。2026年10月分(Vol. 1)は、坂田(柳元)麻実子氏が担当します。
A Bivalent Molecular Glue Linking Lysine Acetyltransferases to Oncogene-induced Cell Death
Cell. 2026;189(18):5590–5610.e18. doi: 10.1016/j.cell.2026.06.037.
Meredith N Nix, Sai Gourisankar, Roman C Sarott, Brendan G Dwyer, Sabin A Nettles, Michael M Martinez, Hind Abuzaid, Haopeng Yang, Yanlan Wang, Juste M Simanauskaite, Bryan A Romero, Hannah M Jones, Andrey Krokhotin, Tara N Lowensohn, Lei Chen, Cara Low, Mark M Davis, Daniel Fernandez, Tinghu Zhang, Michael R Green, Stephen M Hinshaw, Nathanael S Gray, Gerald R Crabtree
ここに注目!
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)について、化学誘導近接法(chemically induced proximity, CIP)を用いることで、DLBCLのドライバーであるBCL6が抑制している標的遺伝子のエピゲノム状態をリプログラムし、細胞死を誘導する新たな治療薬開発についての研究である。
筆者らは、リジンアセチルトランスフェラーゼ(KAT)を基盤とするKAT-TCIP(KATを利用した転写/エピゲノム的化学誘導近接分子)を開発し、アセチルトランスフェラーゼp300/CBPをBCL6へとリダイレクトして両者の複合体形成を誘導した。これによりp300/CBPが触媒するクロマチンのアセチル化が再分布し、BCL6が抑制していた細胞死ネットワークが活性化され、アポトーシス誘導とともにがん遺伝子c-MYCの持続的な抑制がもたらされ、in vivo異種移植モデルにおいても腫瘍を消失させた。
今後は、p300/CBP以外にも異なる転写活性化因子をリクルートする分子をデザインすることで、様々な転写調節を誘導できる可能性があり、こうした分子を利用した新たな治療開発が期待される。